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麦の海に沈む果実/恩田陸

麦の海に沈む果実
麦の海に沈む果実
恩田陸 講談社文庫
「光も影もない。ここはやはり三月の国なのよ。出会いと別れの国。それ以外の何物でもない。」


大きな湿原の中にある『青の丘』。以前は修道院だったというその丘に作られた全寮制の学校。

十四歳の少女、水野理瀬は二月の最後の日に転入してきた。

ここでは三月にしか生徒を受け入れないという決まりがあり、三月以外に入ってくる者があればその者は学校を破滅に導くという伝説があった。

それぞれの事情で学校に入れられた生徒達は、素性を隠しファーストネームだけで呼び合う。頂点に君臨するのは男の姿と女の姿を自在に操る校長。謎の失踪をする生徒、やがて起こる殺人。理瀬と「三月の国」との関係は―。

舞台となる学校がとにかく良い。図書館、温室、岩場の劇場、尖塔、薔薇の迷路。校長先生のお茶会やダンスパーティ、ハロウィン。生徒達は学年を縦割りにしたグループに所属し、それを爛侫.潺蝓辞瓩噺討屐3鯵Δら閉ざされた学園の世界にすっかりのめり込んでしまった。

登場人物も魅力的。主人公の理瀬をはじめ寮の同室の憂理、天使のようなヨハン、そして同じ爛侫.潺蝓辞瓩糧森嚇な少年、黎ニ。
黎ニが図書館の張出窓で詩を読むシーンは、その詩とともに強く印象に残った。

碁石のゲームの場面もスリリングだ。恩田陸は作中でこういった多人数で行われる爛押璽爿瓩鮟颪のが上手い。『六番目の小夜子』の体育館での劇を連想しながらそう感じた。

この作品を「学園で起こる殺人事件を解決するミステリ」として読んだ人は少々不満が残るかもしれない。恩田作品では最後に名探偵が人を集めて「さて」と言い、バッサリと謎を解き明かしたりはしない。
読後に残るのはそういった爽快感では無い。(もちろん意外な結末は用意されているが)

読了後に残るのは、本の中にある世界がそのまま心で続くような、自分の心の一部が本に取り残されているような気持ち。
登場人物の「これから」を想像しながら、本を置いてもしばらくはその世界に浸ることができる。それが恩田陸の魅力の一部だと思う。

どこか懐かしく、霧に包まれたような独特の雰囲気。それは子供の頃によくみた、漠然とした不安を感じさせる夢に、似ている。



最後に。
この作品は『三月は深き紅の淵を』とおもしろい関係性がある。
笠井潔さんの解説に詳しく書いてあるが、同タイトルの本はこの『麦の海に沈む果実』にも登場しており、入れ子の入れ子のような感じになっている。こちらも合わせて読むと、いっそう不思議な気分になれるので、是非どうぞ。
瑛里 * 読書 * 11:15 * comments(0) * trackbacks(0)

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